《ふとんが吹っ飛んだ》を思い出さずには見られないヴィデオですね。人生到る處不運あり。


というようなヴィデオから始めてしまうと続けにくい話題になってしまうけれど、5日、大岡 信の訃報があった(cf. 大岡信[ググる!])。いい読者ではなかったけれど、考えてみれば「折々のリンク」というようなふざけたタイトルも、この詩人の言葉の影響下にあるということになるのだから、触れずに済ますというのも失礼な話だろう。でも、いい読者でなかったぶん、話はどうしてもアチャラカな具合になってしまう。それはそれで失礼な話で、ということはつまりどう転んでも失礼な話しか書けないのだ、と思うといくらか憂鬱な気分になる。

そんなこんなで、周辺的な話を一つ書いてお茶を濁すことにする。


訃報そのものの記事では仕方がないところだろうけれど、その後の彼の死をめぐる記事でも、不思議といえば不思議、たぶんそんなもんだろうと思えばそんなものなのだろうけれど、6日になって出た「『春死なむ』大岡信さん 生の躍動、現代詩に新時代」(朝日新聞デジタル)「『春死なむ』大岡信さん 生の躍動、現代詩に新時代」(朝日新聞デジタル)のhatebu以外に、僕が目を通した範囲では詩作品からの引用のある記事がなかった。多くの記事において、詩人の生涯を振り返りつつ、その散文は引かれていても詩は引かれないというのはどういうことなのか。

その例外的記事の引用にある「春のために」*1は、中学3年のときだったっけかの国語の教科書の最初の単元に登場していたもので、並んで掲載されていた室生犀星の「寂しき春」*2との明暗のコントラストのおかげで、なんとなく記憶にとどまっている、というようなワタクシ語りはさておき、世界と自分が渾然一体になるような、中3にはいささか難しかったに違いないほのかなエロスを感じさせる生き生きとした言葉だって、断片的に引かれるにすぎない。季節が季節なわけだし詩人の死を悼む記事でのことなのだし、せっかくだから全篇を引いたっていいではないか。

でも、あれだな、そういうのは、つい先日の「なぜ日本では詩が流行らないのか」(はてな匿名ダイアリー)hatebuなんかが200を超えるはてブを集めてしまうような時代と社会にあっては、それこそますますもって流行らない流儀なのかもなぁ。そういうことなのかなぁ。う~ん。


「詩が流行らない」というのはどういうことなのか。

単純に考えると詩集が高いっちゅうのがデカいんぢゃないのか。流行らないから高いという学術書みたいなアレも考えられなくはないけれど、学術書よりは瀟洒な装幀が施された書籍となると、多少売れたところでそうは安くならない。今の10代、どれだけ詩集に金がかけられるか。売れない本は、最近だと図書館にだってなかなか入らない。売れない上に高いとなると、限られた図書購入のための予算、どうしたって詩書の揃えは後回しになるだろう。東京ならデカい本屋にはそれなりの詩書のコーナーがあるけれど、他ではどうか。堺だと詩書のコーナーなんてお飾り程度ですら怪しいほとんど絶滅状態だな。立ち読みすら出来ない。教科書に仮にチャーミングな詩が掲載されていて、あるいは『折々のうた』で紹介されていて心惹かれても、そいつが収録された詩集にたどり着くことは難しい。こうなると新規読者の獲得はまず無理だということになる。流行る流行らないどころではない。詩の新規読者なんて今やレッドカード、ぢゃないや、レッドブック入りしたようなものなのだ。

思潮社の現代詩文庫のブックデザインが今となってはどうなんだということもある。二段組というがそもそもどうにかしているとしか思えないし、お値段に釣り合わないパッと見の貧乏臭さには度し難いものがある。イマドキ、通常の文庫本だって鮮やかなデザインのカヴァーになっているのに、若いヒトの心を惹くのはかなり難しいシロモノになっているといえちゃうんぢゃないかしら。

とそんなこんなで、詩そのものの問題みたいなものだって考えたほうがいいのかもしれないけれど、それよりは詩書をめぐるフィジカルで散文的なアレコレのほうが実はデカいんぢゃないか。多少の読み慣れや読書の蓄積がないと辛いところもあるかもしれないけれど、読めばおもしろく感じるだろうヒトの潜在人口みたいなのは小さくないと思う。でも、新規読者としての参入障壁って、物理的にデカいものになっているんぢゃないかなぁ。あとは詩について語るヒトがむやみに難しい話をするというあたりの心理的障壁。四の五の御託を並べなくったって、難解だと云うヒトが今も絶えない西脇順三郎だって頬を緩めながら読めちゃうし、入澤康夫でも吉岡 実でも吉増剛造でも素朴にカッコいいぢゃんと思うんだがなぁ。う~ん。七面倒臭いことを云うヒトがいたってかまやしないのだけれど、そういうヒトばかりが目立っていると、君子危うきに近寄らずだかなんだか、詩の周辺は近づかずに如かずと感じるヒトがいらしても不思議ではない。

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今ならこれが入り口ということになるんだろうか。訃報の翌日で売上ランクが498位。大岡 信の知名度をもってしてもそこまでですかね。やっぱり詩は流行らないものなんですかね。う~ん。

僕がまとまった形で大岡 信の作品に触れたのは、高校の図書室にあった『大岡信詩集』(1968年、思潮社)で。ほとんどだれも読んでいなかったのか、出版されてからそれなりの歳月が経っていたはずなのに、ずいぶん真っさらな状態だったような記憶がある。詩が流行らないのは今に始まった話ぢゃないっちゅうことですかね。


この日は、「フォークシンガー加川良が死去」(音楽ナタリー)hatebuというもう一つ目立つ訃報があったのだった。訃報記事もいろいろ出ているけれど、まずは「加川良さんのこと」(浜田真理子オフィシャルブログ「本日のハマダマリコ的こころII」)hatebuかしら。

加川作品、オリジナルもいいのだけれど、ここはたぶん常連諸賢にいくらか聴きやすいかな、と思える浜田のカヴァーで。浜田を取り上げるのはひさしぶりだけれど、やっぱりうまいな、このヒト。

オリジナルのほうは、加川良「教訓 I」(YouTube)hatebuからどうぞ。

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その他5日のアレコレは、neanderthal yabuki(@nean)/2017年04月05日 - Twiloghatebuからどうぞ。


立ち読み課題図書、その他

ロー・ファイではあるけれど、サンプラーが付録についてくるのだそうな。先日の『なかよし』といいコレといい、近頃のガキンチョ雑誌の付録はどうなっておるのでせうかね。

いかんな、物欲がそそられちゃうな。


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