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最終更新日時 : 2018-03-26 23:32:02  
じゃんけん

じゃんけんの勝敗図*1

奇抜、と見える設問に出喰わせばだれだって驚く。でも驚いたまんまぢゃ答案は書けない。

ではどうするのか。毎度基本に立ち返る以外にあんまり打つ手はないというとこいらへんが今回のお話。

例題

じゃんけんの選択肢「グー」「チョキ」「パー」に、「キュー」という選択肢も加えた新しいゲームを考案しなさい。解答は、新ゲームの目的およびルールを説明するとともに、その新ゲームの魅力あるいは難点も含めて、601字以上1000字以内で論じなさい。

2018年早稲田大学スポーツ科学部


基本的な考え方で論考の大枠は割とすぐわかる(んぢゃないかなぁ)

(大人の事情により本問についてはここで詳説するわけにはいかないので、いとぐちのあらましだけだけれど、参考くらいには充分なるんぢゃないかしら。ならんかなぁ。う~ん/(^o^)\)。

意外な出題で一番まずいのは、意外だった点に目を奪われたまま答案のアイディアを練ってしまうことだ。本問でいえば新しいゲームのルールの案出にのみ目を奪われてしまい、設問の核である「論じなさい」が手薄になってしまうこと。予想していなかった内容や形式をもった問題ほど、冷静に基本を振り返って考えられるかどうかが重要になる(ことが多い)。

本問の場合、新しいゲームを作ることがテーマになっている。一般に、古いものになにがしかの手を入れなければならないということは、古いものに問題点/改善すべきところがあるからだということになっている。世の中は広いから、気分転換にちょいと新しくしてみようぜぃってな場合もあるには違いないだろうが、そのへんは酔狂であって、ここでは取り合わない。

設問は新しいゲームについて「目的」「ルール」「魅力/難点」の3点を語るように求めている*2。とすれば、じゃんけん(古いゲーム)についてもその3点から分析して見直してみればいいんぢゃないかということになる。

たとえば……。《じゃんけんは、一般的にいろんな物事の優劣や順位を決定するために用いる簡便公平な手段としての利用》が「目的」だといえるだろう。で、「ルール」は閲覧諸賢先刻御承知の簡単なもの。だから、《(手指その他に怪我や障碍がないかぎり)だれもがすぐに参加できるという長所(魅力かな?)がある一方で、勝敗は実質的に偶然頼りであり技量を鍛え上げ技を磨き上げるような愉しみに欠ける(難点)がある》*3と整理できるかもしれない。

そうすると新しいゲームは、そういうじゃんけんの性質と対照的なものとして構想されることになるだろう。新しいゲームは、

  1. 何かのために利用する手段ではなく、それ自体を愉しめることを目的とするようなゲームである(手段×⇒目的○)
  2. いろんな物事に利用するという汎用的なものではなく、特定の目的に利用するゲームである(一般×⇒特殊○)

というような2種類あたりが思いつきやすいものとなるかなぁ。

で、たとえば1.を採ってみると、考えられるゲームでは《複雑でも構わないから、深く習熟すればするほど培われた実力で勝負できることを重視したルール*4》が必要になるだろうし、その分《入門者がルールを知りさえすれば即座に参加できるような簡便さに欠けるという難点を持つが、それ自体にじっくりと取り組み実力を身につけた上で勝負に臨むような愉しみを魅力として獲得する》ものになる、みたいな論考の大きな枠組みを考え出すことができるだろう。

2.を採るとすると……ってなあたりは自分で考えてみてちょ^^;。ルールも含めると、たぶんこちらのほうが考えやすいんぢゃないかしら。

このへんの考え方は、《旧vs.新》という対比の形で整理できるところだから、発想としては割と基本に忠実なもの*5。対比・対照で考えろとかなんとかいったあたり、似たような話は塾や予備校の小論文の授業で耳目にしたことがあるんぢゃないか。現代文でだって、そこいらへん読解の要諦の一つとして耳タコぢゃないかな*6。でも、基本に忠実ならだれでもそういう発想をとってしまって皆似たり寄ったりの答案になるかというと、予想外の出題に対して基本に忠実にホイホイなれちゃう冷静なヒトはレアなのが現実。

で、上記のようなあたりを考えないで臨むと、新しいルールの説明ばかりに記述を割いてしまい「論じなさい」に応える議論なんか書いてらんないってな具合になっちゃう。


で、ルールのほうは書きません。ケチだからぢゃなくて*7、アイディアを書き始めるとキリがなくなっちゃうんだもんね。設問にはルールについての制約が一切書かれていない。キューと他の選択肢との関係、位置づけもさることながら*8、たとえば、個人戦 or 団体戦、点数制なのか単純に勝敗を決するだけなのか、一回こっきりなのか複数回で勝負が決まるのか、あるいははたまたゲームの途中でグーチョキパーキューの強弱関係を変化させるかどうかとか……何もかもに制限制約がない。考え得るアイディアを書き並べるときりがなくなるもんね。

逆にいえば、その部分で他の受験生と争おうと考え出すとまぁ無限地獄で阿鼻叫喚*9ですね、って感じぢゃないかしら。限られた字数と時間の中で抜きん出て興味深いルールを案出するのはきわめて困難。先に述べたような論考部分を固めて、ルールの練り上げは論考に沿う形であっさりと、ってくらいが答案の充実には有効だというのが実際のところなんぢゃないかと思う。もちろん、早稲田くらい受験生がいれば、試験中にだって素晴らしいルールが考案されるってことがあってもいいに決まっているんだけれど、それでもそのへん、自信をもってこなせる受験生は少ないんぢゃないですかね。そうでもないですかね。う~ん。

と、そんなこんなで奇抜に見える問題でも、基礎基本を大切にしませうね、というお話でした。


おまけ

今回の早稲田大学スポーツ科学部の出題には、正直なところ僕も驚いた。たしかに昨今はエレクトロニック・スポーツ[ググる!]e-スポーツ[ググる!])みたいなスポーツ概念の拡張と見えるものやら*10超人スポーツ[ググる!]みたいな、身体を使いながらも仮想現実や拡張現実のテクノロジーを持ち込んだ新しいスポーツの開発やらがあったりして、競技を開発することもスポーツ科学に求められているのかもしれない。面倒臭いからもう詳細は書かないけれど、超高齢社会からだって似たような需要は考えられる。だから、実はそこいらへんの話題を扱った出題も可能性として考えて来なかったわけではない。でも、実際に紙上で競技を開発させるという実践が問われるとは、これっぽっちも想像していなかった\(^o^)/

でもまぁだからといって、それなりにまともな小論文の指導を受けて来たってんであれば、打つ手なしってことはマズない。それはそれでないがしろに出来ない大切なことであって*11一概に悪いときめつけるわけにはいかないのだけれど、出題傾向に沿った知識講座みたいなのばかりってタイプの指導ぢゃ困るわけですね。知識だけではなくて、そういうものの使い方(=考え方)の基本も何とかしてくれなきゃぁね。といいつつ、そこいらへんの記事、ここではまだ書いてないなぁ\(^o^)/。すみません、すみません。

それにしても、こういう出題は今後も警戒すべき傾向になるのかなぁ。ここ何年も早稲田大学スポーツ科学部の出題って、少なくとも出題の形はずいぶん変化しているから、まぁ今さらそんなことで悩んでもしょうがないかぁ\(^o^)/


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小論文の参考書としては異例のロングセラーの改訂版。たぶん論評系ブロガーさんなんかを目指す若いヒトも読んで役に立つんぢゃないですかね。



  • 注1「Rock–paper–scissors」(Wikipedia)より拝借。
  • 注2 「目的」という言葉は、「ルール」の内に捉えることもある。競技の、すごろくに譬えれば「あがり」に相当するヤツを「目的」としてルールに定めるわけ。でも、ここでは設問に合わせて別扱いとする。
  • 注3 「偶然頼り」と云い切っちゃうと違和感を覚えるってヒトもいるみたいだけれど、まぁそうだから仕方ないですね。ごく限られた仲間内なら出す手の癖みたいなものがあって、それなりに心理的駆け引きが存在し得るケースも考えられないでもない。でも、参加者が多い国際大会(なんとそういうのが存在するのだ!)の例年の上位入賞者を見ると、毎年入れ替わり立ち替わりで同じ名前が登場することなんてほとんど皆無といっていい状態なの。つまり、従来のじゃんけんは実力勝負というよりも「偶然頼り」と見たほうが実情に近いんぢゃないですかね。cf. 「じゃんけん 10 主要な大会」(Wikipedia)に出ている World Rock Paper Scissors Society sanctioned tournamentsの結果など。
  • 注4 心理的駆け引きがモノをいうルールとか、確率的な計算が直感的にパパっとできるかどうかが勝敗を分けやすいルールとか
  • 注5cf. 「比較対照ってやっぱ重要だと思うなぁ」hatebu。必ずしも小論ネタとして書いたわけぢゃないけれど、十分参考になると思うぞ。
  • 注6 読むべき文章にそういう形が存在するということは、書くべき文章にそういう構造を作り込めばいいということになるでしょ?
  • 注7 ケチでないわけでもないかぁ\(^o^)/
  • 注8 あんまりちゃんと考え抜いていないからアレだけれど、このへん、そんなに複雑な関係を設定するのはむずかしいんぢゃないかな。基本的構造は、大雑把に見て2通り。一つはキューを旧来のグーチョキパーと対等なものにするというパタン。じゃんけんの選択肢それぞれは他の2つの選択肢との勝敗関係しか持たなかったが、キューが加わると3つの選択肢との関係を考えなきゃいけなくなる。そうなると、一つの選択肢が他の3つの選択肢に対して取り得る勝敗パタンは、(勝ち×2、負け×1)、(勝ち×1、負け×2)、(勝ち×1、負け×1、引き分け×1)くらいになるのかな。全体で選択肢が全部同じだったり4通り全部がそろったりすると、これも引き分け。そういう簡単な設定ぢゃつまらないというヒトもいらっしゃるだろうし、多人数だとあいこ(引き分け)が増えて勝負がなかなかつかないぞと文句をつけるヒトも出て来そうだけれど、「目的」をこいつに合わせて考えれば、こういうルールもアリだろう。▼もう一つは、グーチョキパーに対して上位/下位にキューを位置づけるパタン。たとえば、キューを他の選択肢すべてに勝つ/負けるような設定。もちろん、それぢゃぁだれもがキューを出す/出さないに決まっているので、なんらかのハンディ/あるいはハンディの逆(なんていうんだ?)か何かを設定することになるだろうけれど……ってな感じで、ありがちな答案としてはこのへんを基本にしたルールを考えてるんぢゃないか、と思っちゃうんだけれど、どうかしら。▼細かいところはさておき、想定されるルールのほとんどはこの2つの基本構造のヴァリエーションにとどまるんぢゃないかなぁ。たとえば、キューは他の選択肢と同時に提示することで意味を持つようにするとか。そういうのはだいたい後のパタンになるんぢゃないか。
  • 注9 「無間地獄」の洒落です。すみませんm(_ _)m
  • 注10 僕みたいなコンサヴァ爺ぃには、派手なコンピュータゲームくらいにしか見えないんだけれど。
  • 注11cf. 「本日の小論文のお勉強/早めに取り組みたいこと」hatebu


最終更新日時 : 2017-10-28 16:49:59  
20110713215328

※ 写真は本文と関係ありません\(^o^)/

諸般の事情により、小論文対策を半ば以上独習せざるを得ない受験生用にいっちょ。独習者じゃなくても、自分の書いてきた小論文答案をじっくり見直したいと考えているヒトにも、ひょっとすると役立つかも。

見ていて気になるのは*1、答案の見直しの実態。言葉遣いのことばかり気にしてもっと重要なところの問題点のチェックを疎かにしていやしないか。もちっと小論文という科目の特殊性を考えた見直し方が必要なんぢゃないかと感じたあたりをまとめてみた。いくらか思いつき的に書いちゃったきらいなきにしもあらず、雑なところが残っていもする。ご利用は自己責任でってところ。とはいえ多少なりとも参考になる程度のことは書けているんぢゃないかと思う。必要に応じて利用してくれれば幸甚。


で、見直す際に独習者くんに欠けているのが、見直しポイントの軽重を考えていないこと。まずは、そこいらへんの見定め方、プライオリティを示してみよう。


見直しポイントのプライオリティ

見直しの目のつけどころを優先順位にしたがって掲げると大雑把なところ、以下のようになる。現実には設問によりけりで考えるべきところはいくらでもあるけれど、基本的な見通しとしては大過ないんじゃないかというあたりを一つ。

  1. 設問への応答
    1. 主題(何について問われているか)を把握しているか
    2. 主題に関して求められるタイプの判断・説明が行われているか
    3. 付された条件は守られているか
    4. そこいらへん、誤解のない形で適切な場所に書かれているか
  2. 与えられた文章・図表の処理
    1. 読解が設問に応じた形で行われているか
    2. どういう部分で読み損ねているか
    3. その理解は適切な形・適切な場所で提示できているか
  3. 論・段落構成
    1. 具体例が主張・考察に論理的につながるものになっているか
    2. 小主題・論考中の機能に応じた段落構成が採られているか
    3. 具体例に対して適切な着眼が採られ適切な語彙を使って表現されているか
    4. 具体例の選択が社会的知的関心の高さのアピールにつながるものか
  4. 国語表現上のあれやこれや

以下、上に示したあたりを少していねいに説明してみよう。


設問への応答

小論文の答案だって「答案」という以上は問いに対する答えでなければならない。問われたことに答えていないのでは答案にならない。小論文初心者くんだと、そこいらへん雰囲気的にしかわかっていないってことが多いみたい。考え込んでいるうちに熱くなっちゃって冷静さを失って書いちゃった場合なんかだと、普段は書ける人だってここいらへんでミスを犯すこともある。最大のチェックポイントだ。ただ、書いてから多少の間をおけばチェックそのものはさほどむずかしくはないだろう。

以下、参考になりそうな記事へのリンクを挙げておく。ついでに目を通しておいてもバチは当たらないと思うぞ。


提示された文章や図表の処理

次に、提示された文章や図表の処理。このへんでの失点も答案全体の評価に響くケースは多い。同じような文章でも、要約的な理解が必要な場合もあれば列挙された事例から仮説を導出しなきゃいけないって場合もある。面倒臭いところだけれど、ここいらへんは独習者でも学参なり問題集なりの解答例・解説を参照すればなんとかなるところかな。

このへん、あんまり記事を書いていないのだけれど、「要約の基礎徹底」(PDF)あたりは参考になるんぢゃないかと思う。例題はいずれも古いんだけれど、基本的な考え方そのものは今だって通用するはず。あ、文中紹介してあるメールアドレスは現在使用していないので、そこいらへんは注意されたし。


論・段落構成

このへんが作業としては一番面倒かもなぁ。たとえば、どんな小論文の参考書にも自分の主張にはちゃんとした根拠を示さなきゃダメだと書いてある。でも、一体何がちゃんとした根拠になるのかわかってないなぁと思える答案って結構多いのだ。「自分の経験談を具体例/根拠として取り上げていいか?」といった疑問が湧いてきたりするのはわかってない証拠。それでいい場合もあればダメな場合もある。ごく一般的にいって、論理的な文章で具体的な根拠が求められるのは、単に根拠としてだけではなくて、読み手が検証できるようにしておく必要性からのこと。そうなってくると、本人でなければ確かめようのない個人的な経験が有効なケースは思いの外限られていると見るのが穏当なところ。もちろん、問題によっては自分の経験に基づく議論が求められることだってある。そういう場合は当然のこととして自分の経験を語る必要があるに決っている。だから、問題によりけりということになる。

具体例の選択が適切を欠いているだろうことがわかったとして、ではどう直せばいいのか。そういうことになれば、まずはその問題を扱っている赤本なり学参なりの解説・解答例を見てみる。それでもハテサテというような具合なら、図書館で尋ねてみるなり書店で適切な話題を扱っていそうな新書類を立ち読みしてみるなりするしかないかな。面倒臭いけれど、もともとの問題がそういう形でしか得られないような具体例なり知識なりを知っていることを求めているんだろうから、まぁ、仕方ありませんね。

また、議論の根拠が具体例や体験談でなければならないとも限らない。厳しい字数制限や論考内容の性格からすれば、一定の知識の提示が重要になることもある。そう数は多くないけれど、小論文で面倒な問題を出すところを受けるって人は考えておかなきゃいけないところかな。このへんも見当がつかなければ、まずは参考書・過去問集の解説・解答例を参考にしてみるしかないか。

以下は考察の目のつけどころなんかを考える上で参考になりそうな記事へのリンク。読めばわかると思うんだけれど、設問をていねいに検討することがいかに重要なのかってなあたり改めて注意深くあってほしいところかなぁ。


国語表現上のあれやこれや

最後に回したのは、別にコイツを軽々に扱って良いからというわけではない。でも、自分で答案を見直すとなると、どうもこのあたりばかりに力を入れて、上に挙げたアレヤコレヤのほうは蔑ろにされる傾向がある。少なくとも小論文重視んところを志望している人なら、そいつぁ不味かろうというわけで、ここでは最後に回してある。


その他あれこれ

もちろん、上にあげたような優先順位は一般的なもの、大雑把なものにすぎない。実際には、設問のありよう、志望校志望学部などによって検討しなければならないことも出て来る。

たとえば、最後に回した「国語表現上のあれやこれや」にウエイトを置かなければならないケースだってある。大学・専門学校の難易度によっては、最優先しなければならないケースもめずらしいとはいえない。あるいは、「公募 I 期・II期推薦入学試験の『小論文が変わります!』」(川村学園女子大学)hatebuのように、ごく大雑把にいえば、小論文というよりは作文寄りの出題傾向を採ることを宣言する大学もある。宣言してなくったって問題を見ていれば同様の出題傾向のところはいくらでもあるし。そんなこんなで受験生の現状や志望によっては、論証のあり方や論構成よりも表現力その他を重視せざるを得ないことだってあり得るわけだ。そこいらへんは、独習者くん各自で調べて自分のおつむで考えといてくれたまえ。

ただ、一般的な話としては上に挙げた優先順位を念頭において、自分の答案を見直すようにすると言うのは間違った話ぢゃぁございませんぜぃ。


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名著改訂版。中堅以上の小論文重視校を受けるなら、このへんがスターティングポイント。



  • 注1 といっても、独習者くんと出会う機会なんてめったないから、偏った見方になっている可能性も小さくないのだけれど。


最終更新日時 : 2018-01-23 11:18:20  
20130601010414

大学入試小論文対策関連のエントリを「入試小論文」「小論文の道具箱」カテゴリhatebu*1にまとめた。旧来問題の性格に応じて複数のカテゴリに分けていたところ、どうもそいつはわかりにくい、面倒臭い、その他いろいろetc...とにかくウザいと不評だった。しかしまぁ新たな分類を考えるのも面倒臭い。というわけで、エイやっと一つにまとめちゃったという次第。これはこれで読むのに便利かどうかよくわかんないけれど、タイトルは通常のエントリよりは多少マジメにつけているので、そこいらへんを頼りに各自の必要に応じてテケトーに取捨選択のうえ読まれたし。時間が許せば全部読めばよろしい。どうせ今んところ、大した数はないんだからぁ\(^o^)/

その他、上位ディレクトリにも関連記事がある。

あえていえば、「自分の関心のありかをたしかめよう」hatebuは、問題そのものよりも小論文対策の出発点で考えておいてほしいことにウエイトのある記事、「ツッコミ演習」hatebuは、考え方の問題を扱った記事、「要約の方法/『要約の基礎徹底』公開してますぅ!」hatebuは、小論文対策としておおよそ必須といえる要約についての無料PDF教材の紹介記事になっている。これらは「別冊 日々の与太」に引越すつもりが面倒臭くて放置したまんまになっている記事だな。いやはや。

「極私的脳戸/日々の与太」に書いていた記事の復旧作業が全然捗っていないこともあるけれど、新しい記事も最近は全然書いていないから、まったくもって内容は不充分だなぁ。うーん。今年はもちっと書いてみますかね。


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こういうよく出来た参考書があると、僕がエントリなんぞ書く必要がないような気もしてきちゃうよなぁ。まったくもってケシカラン本ですよぉ。お薦め。


入試小論文を主題にした本ではないけれど、小論文指導にあたっておられる高校の先生方など指導者さんにとって有益な本だと思う。特に添削指導のありようを考え直すにうってつけぢゃないかな。


  • 注1 かつての読者さんからのアドバイスで、昔やっていたサイト名にカテゴリ名を改めた。まさか今でも世間的に通用するとは思わないけれど、「入試小論文」なんちゅう野暮なのよりはいいかもね。

最終更新日時 : 2017-08-13 15:03:29  

そうだよなぁ、これは早めに知られるべきだよなぁ、ということを一つ。

というわけで、手っ取り早く云うと、要するにちいたぁ本を読み給えということになる。

小論文対策にとりかかったばかりで、志望大学学部の過去問をまだ読んだことがないと、そのへんあんまりピンと来ないのかもしれないなぁ、とは思う。でも、現実に問題を眺めているとそうは問屋がおろさないってことはそう珍しいことじゃない。

たとえば、今春(2016年)、早稲田大学スポーツ科学部の問題。

問題

次の論題について、あなたの立場(肯定側)と対立する立場(否定側)のヒトを説得することを目的として、あなたの考え方を論述してください。その際、決められた立場(肯定側)に立って現状を見つめなおし、客観的に論題に対する検証を行うようにします。つまり、この論題に対して「自分は反対だ」と思っても、ここではその考えに関わらず、論題に対して賛成の立場に立って、八〇一字以上一〇〇〇字以内で論述してください。

なお、論述においては以下の関連事項に関する記述及び否定側の論点を踏まえて、否定側や第三者をいかに説得できるかという観点から述べることが重要です。


【論題】

高等学校における「運動部の活動」の現状については、改革をすべきである。


【論述の立場】

  • 肯定側:改革すべきである。
  • 否定側:改革すべきでない。
  • あなたの立場:肯定側(否定側を説得するための肯定論を述べる立場)

【関連事項に関する記述】

学校の部活動

生徒の自主的、自発的な参加により行われる部活動については、スポーツや文化及び科学等に親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等に資するものであり、学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意すること。


【否定側の論点】

運動部でスポーツ活動を行うことは、高校生にとって心身の発育発達を図る上で重要な機会となっていること、また、競技力の向上や生徒の一体感などが醸成されることなどから、現状における高校の運動部活動を改革する必要はない。


(強調引用者)

問いの求めはクリア。

  • 《高等学校における「運動部の活動」の現状については、改革をすべきである》という立場の検証・意見論述を以下の条件で
    1. 《関連事項に関する記述及び否定側の論点》を踏まえる
    2. 《否定側や第三者をいかに説得できるかという観点》の重視

読めばわかることだけれど、「関連事項」は「運動部の活動」の理念(あるべき姿)*1、「否定側の論点」は同じく現状認識*2についての記述になっている。これを踏まえて現状改革の必要を語るとすれば、「関連事項」に反する現状を指摘し、「否定側の論点」の認識の誤りを正すというのが答案の基本方針となる*3

さらに、現状を指摘するといっても、《~をいかに説得できるか》を考えると、所謂「個人的な体験談」みたいなものは無意味だということになる。「私が属していたバスケットボール部では……」みたいなヤツだと、自分の議論に都合のいい話がいくらでもホイホイ書けてしまうもんね。説得力を重視するぞという設問の条件に充分に応じるものだとはいえない。普通に考えても個人的な経験談は「検証」には適さないってことになる*4

そうなってくると、否が応でも、運動部の活動の理念に反していて、ついでに否定側が示す現状認識の誤りを示すような事実とかだれもが認めるような見解とかを知っているかどうかが答案の出来不出来を左右することになるということになっちゃう。検証という言葉をわざわざ使っているのだから、このへん、ゆるがせに出来ないんぢゃないか。

たとえば、運動部での競技での勝利のためと称する、根性・精神論的で非合理なシゴキ・体罰が伴う「指導」の問題なんかを取り上げて、そういうのが否定側の云う心身の発育発達に資するものになっておらず、むしろ心身を傷つけときには死に至らしめるようなものになっている、そんなふうにまでして勝敗にこだわるっちゅうのは学校教育の一環からの逸脱であって容認しがたいぢゃないか、指導はちゃんと合理的なスポーツ科学の成果に則ったものへと改めてかなきゃダメぢゃん、といった答案展開の見通しが持てるんぢゃないか。「スポーツ科学」云々ってな語句を出すとちょいとあざといから、実際の答案では「合理的な指導」くらいにすべきかもしれないけれど、それはまぁ枝葉末節の話として、見通しだけ考えても、なんだかスポーツ科学部志望してまっせってな答案が書けちゃいそうでしょ? でも、示せる事実がなければ、どうにもならない。

探せば、この手の話はネットでいくらでも拾える*5。ただし、信頼のおける話かどうかの判断が結構面倒臭いものもちょー付きで多いのが現実だ。サイトや書き手の立場なんかを考えないといけないのだけれど、そこいらへんの判断は結構大変。その点、書籍の類はいくらかそのへんの判断がしやすいってあたりがあって、やっぱり受験勉強としての効率を考えると、現在だいたいのところ、あたるべきはネットより本ってことになる。

ここいらへんは、志望者が日頃どんな読みの経験を積んでいるか問われるところ。高校の運動部の部活なんて参考書や予備校・塾の一般的な小論文講座でそう都合よく扱ってくれそうな話題ぢゃないもんね。面倒臭いかもしれないけれど、スポーツ科学を志しているのにそれに関わる話題を、学校で習わなかったから、参考書に出ていなかったから知らないってんぢゃぁ、志望動機を疑われても仕方がないくらいのもんぢゃないかしら。

こういう出題って、別に早稲田のスポーツ科学部特殊特有の傾向だってわけぢゃない。比較的志望者が多くて小論文も重視してるっぽい大学学部の問題を見ていると、「学校のお勉強」以外での受験生の知的奮闘ぶり求めているのって結構多い。そういうところって、志望動機に関わる重要なポイントでもある。ことさらキツい話をしたいってわけぢゃないんだけれど、でもそこいらへん、全然なぁにもネタがないっちゅうのでは、Youはなにしに大学へ? ってなもんだと傍目からは見えちゃうことでもある。


というわけで、こういうところは山添先生の仰るとおり、書き方だとか型だとかとは別に注意を払っておくべきところだし、時間のかかるところでもあって、志望領域が決っているのなら、小論文対策の早い時期から考えておくべき重要事項だってことになる。その割に、そのへん手薄になっているヒト、多いんぢゃないか?


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中堅以上を目指すんなら、これが最初の一冊としてお薦め。小論文の参考書としては異例のロングセラーぢゃないかしら。


すでに品切れ、あらま「現在お取り扱いできません」になっちゃってるけれど。スポーツ科学部志望ってんなら、この雑誌、悪くないと思うなぁ。気になる話が特集されているときくらいは、目を通しておいて損はないんぢゃないか。最新号は、

現代スポーツ評論 33 特集:女性スポーツの現在

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最終更新日時 : 2016-11-26 12:44:52  

これは吉岡先生のおっしゃるとおりなんだろうなぁ。解答例を完全に暗記するなんていうのはそもそもナンセンス。件のコメント、ホントのところ、語彙で躓くということは理解しておかなきゃいけない解答例の理路もつかめていないということなのだろう。理路の成り立ちがわからないとすれば、暗記したところで応用の利かせようもない。小論文問題の出題内容は多様であり、吉岡先生の参考書を読むレヴェルの受験生が志望する大学を考えると、解答例の丸暗記でホイホイなんとかなるとは考えにくいだろう。

とはいえ、一方で、結構な難問に出喰わした際に、解答例にあったフレーズや段落に救われたというような話を合格者から耳にしたことも大手予備校時代には何度もあった。そういう話を聞いた受験生さんが、そうか解答例を暗記しちゃえばいいのか、みたいなふうに勘違いすることがひょっとするとあるのかもしれない。

実際のところ、そういう合格者くんと話をしてみると、ぴったり予想通りの出題がなされて、条件反射的に解答例のフレーズなり段落なりが思い起こされてホイホイ答案が書けちゃったというようなおめでたいお話は、まず滅多ない。予想外のテーマの予想外の出題、はてさて困った困った、でも課題文の議論は授業でやった別のテーマ問題で考えた理屈と形そのものは似ている、そうか、ここいらへんの事例の扱いを入れ換えて考えれば理屈そのものは解答例のパタンでナントカ処理できるかも……というような具合で解答例が役立った、みたいなことに話はたいてい落ち着く。

とどのつまりは、所謂「丸暗記」のおかげで助かったというのとは、ちょいと話の筋が違う。学んだことを自分で咀嚼して、特定の問題への解答例にすぎなかった言葉に含まれていた考え方を他の問題にも通用させ得るものへと応用、普遍化できたからそれなりの評価が得られたというような具合なのだ。

というわけで、解答例の丸暗記は、もちろんやってもバチは当たらないが、あんまり直接のご利益は期待できないシロモノぢゃないかな。まずやるべきことは他にあるってことになる。そこをしっかりこなした結果として解答例が頭に入っちゃったということなら、それは全然悪いことじゃないだろう。暗記でホイホイで済ませられないとなると面倒臭いと感じるかもしれないけれど、まぁそいつでこなせちゃうケースは滅多ないと考えておいたほうがいい。


それに、こういうとアレなんだけれど、世間様に出回っている解答例が仮にわかりやすいとしても、それが正確なもの、間違いのないものであるという保証はない。とくに予備校なんかが出している入試直後の速報モノなんかの場合はそう。そいつをそのまま活字にしちゃってる問題集の解答例なんかはちょっと気をつけておいたほうがいいこともある。参考書類にだって怪しいのがないわけではない。

たとえば、これは必ずしも致命的な誤りっていうんぢゃない粗探しみたいなもんだけれど、たまたま目に入ったこの春の事例を一つ挙げてみる。

オリンピック憲章第9条には、「オリンピック競技大会は、個人種目もしくは団体種目での選手間の競技であり、国家間の競争ではない」とある。だが実際には、表彰式の国旗掲揚などの演出などによって、競技は国別対抗の様相を呈している。こうしたナショナリズムを刺激するような演出は……

とある予備校のサイトで公開されていた、とある大学のスポーツ関連学部小論文の解答例冒頭*1。パッと見、あぁ、スポーツの理念を語る際にさっとオリンピック憲章を思いついたのはいい感じだな、とは思ったのだ*2。僕も同じ問題を扱う折があったら真似してみっか(^_^;)……ありゃ、でも「第9条」って何よ、「第9条」って、ってな感じ。現在の「オリンピック憲章」を目にしたことのあるヒトなら、きっとパッと見でそう感じるんぢゃないかな。

たぶん、昔何か二次的な文献で読んだきり知識の更新が行われないまんまだったか、ネタにつまってあれこれググるうちに古いんだか不正確なんだかの情報を掲載しているサイトの文言に飛びついたかしたんぢゃないかと想像するのだけれど、そこいらへんはどうでもよろしいんで、えっと要するに「オリンピック憲章」、少なくとも現在のそれには「第9条」なんて存在しなかったんぢゃないかな?

細かいアレコレに立ち入るのがここでの本旨ではないので、そこいらへんは「オリンピズム | オリンピック憲章」(JOC) はてなブックマーク - JOC - オリンピズム | オリンピック憲章で、2013年版(今のところ最新版)の「オリンピック憲章」でも参照してほしい。目次を見た段階で、そもそも「第◯条」って表現が奇妙に思えるんぢゃないかしら。

上の解答例、「オリンピック憲章第9条には」なんて書かずに「オリンピック憲章には」とでもしておけば良かったのにね。そういうことであれば、引用されているのとほぼ同じ文言が現在の憲章中にも登場する。単語に少々違いがあるけれど、原文を参照できない受験小論文なんだもん、そのへんは問題のない誤差の範囲だろう。

こういう不正確って受験生が漠然と想像しているよりは多いみたい。たぶん、他人様から見れば僕だって似たような誤りを仕出かしていることだってあるんぢゃないかな\(^o^)/。ただし、この程度の不正確はまだ軽微なものだといっていい。答案の評価にかかわるような類の不正確も、速報類の解答例にはたまにある。市販の参考書類にだって存在しないわけでもない*3。だから、少しくらいは警戒しておいたほうがいいんぢゃないかな。大量の解答例の類を丁寧に読み込んで精査しているわけぢゃない僕でも、それなりの頻度で見つけられるんだもん。大げさに騒ぐようなことぢゃないだろうけれど、そういうこともあるということで。

いずれにしても、せっかく丸暗記してもその知識が不正確なものだった、ってんぢゃぁ、入試本番で問題がなくったって、いずれどこかでその「知識」をうっかり披露して赤っ恥をかくことになっちゃうってくらいのことはあるだろう。


とまぁ、そんなこんなで、解答例を丸暗記の対象として捉えるのはそもそもの小論文対策としてナンセンスだし、うっかり暗記したおかげでしくじる危険だって存在しているわけなのだ。

だからして、解答例は、まず理屈の組み立て方に注意を払うべし。まずはとりあえず信頼して読むのはいいとして、でも解答例にちょっとひっかかるなと感じるところがあれば、調べられるものなら調べてみるとか信頼できる先生に尋ねてみるとかするのが賢明だというところか。面倒臭くったって、実際に世の中そうしたもんなんだから、まぁ仕方ありませんね。うー。


吉岡のなるほど小論文講義10—書き方の基本からビジュアル課題まで
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吉岡先生のロングセラー。この10年かそこいら、いろんな小論文の学参が現れては消えていったけれど、結局良書が生き延びているということだよなぁ。これから始めるヒトは、まずここから。


構成がしっかりしていて、学習手順もよく考えられたものになっている。学生さん・社会人さん一般にお薦めしておいてまず間違いないと思う。大学受験生に向いているかどうかはちょっとわかんないけれど、その指導者さんが教えるべきことを考えなおしたり添削の質をあげたりするのには有益だろう。並の文章術指南書は読み飽きたぜぃってな強者つわものさん(?)にも、かな。


  • 注1 批判が趣旨ぢゃないのでリンクは張らない。どこの予備校の速報だろうとあり得る話。どこのことだか勘繰らぬがよろしい。
  • 注2 だって、スポーツの理想的なありようなんて、語ろうとすればどうとでも語れるわけでしょ。たとえば、《しかし、私は、スポーツとは本来「人間同士をつなぐもの」であると思う》とか何とか。そういう語り方よりは話の通りはいいし、あぁスポーツに対して、平均的受験生よりは日頃から関心を抱いているんだな、ってふうに見えるもん。
  • 注3 もちろん、僕が読んだかぎりでは吉岡先生ので見かけたことはないです。はい。

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