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最終更新日時 : 2017-01-27 16:58:59  

ワシントン大学での自分のオツムでコントロールするVRの研究、スゴいのはコントロールよりも、VR内体験を直接脳への刺激として実現しようとしているところ。映像中でのゲームプレイは、直接的な視覚聴覚その他の感覚には拠って行われていない。脳へ直接送り込まれた刺激から感じ取った経験を、プレイヤは自分の行動の拠り所にしているということらしい。

現在のような3Dゴーグルによる視覚的な体験にとどまらず、センサーで捉えられたもの、コンピュータで作られた世界のありさまを、触覚や嗅覚に至るまで経頭蓋磁気刺激[ググる!]Transcranial Magnetic Stimulation[ググる!])を利用して感じ取らせようとする研究がもう実際に行われているとは思っていなかった。…(;´Д`)ウウッ…

実験台になっている研究助手のニイチャンの話によれば、脳への直接的な刺激といっても、実現出来ているブツは、眼内閃光(phosphene)が見えたら障害物にぶつかったのだなと了解するとかなんとかいうレヴェルみたい。だから、研究目標と比べるとお粗末様というところなんだろう。でも、これはなかなか研究の主題としてはおもしろいものなんぢゃないだろうか。

今までのVRだと、視覚は3Dゴーグル、その他の知覚はフィジカルな装置で実現するというのが主流だったんぢゃないかしら。嗅覚のためには匂いの元になる物質を用意して、体験の場でテケトーに合成して体験者に嗅がせるというふうな。あるいは脳と直接信号の遣り取りをして、たとえばロボットをコントロールするとなると、現在だと頭に電極をぶっ刺したりするような侵襲的なアレコレも必要になる。でも、そういう面倒な用意の一切が不要になるわけだ。したがって、フィジカルな障害を抱えたヒトにも、健常者と極めて近しい経験を比較的簡単にもたらすことが出来るかもしれないというわけだ。

視覚に限って云えば、「本日のBGM/Until The End Of The World - Wim Wenders - soundtrack」hatebuで紹介した視覚障害を克服する装置のことを思い起こす。

こういう事態がすべての感覚に及ぶというわけだ。

こういうのが、冒頭のヴィデオでRajesh Rao教授が語る通り、本当に20年程度で日常的に用いられるほど実用化出来るのかどうかはわかんない気がするけれど、出来たとしたらスゴいわねぇ。


当然のことながら悪用も様々考えられる。たとえば、拷問装置への応用なんてのは思いつきやすいところぢゃないだろうか。相手にはリアルで強烈な苦痛を感じさせることが出来て、なおかつ身体に傷跡の類を残さないとなると、警察での取り調べなんかにはモッテコイだと考える向きが出て来ても不自然ではないかもしれない。苦痛を与えるだけなら繊細なリアリティも不必要だから20年待たずとも、実用的な拷問装置なんてホイホイ出来ちゃいそうだし。取り調べの可視化はやっぱり必要なんぢゃないか。うーん。

個人的にはかつて『ニューロマンサー』が描いていたような全身的なネットへの没入みたいなものが実現される可能性を想像しちゃったりする。そこいらへんは実用性がないけれど、娯楽目的での本格的でないかもしれないけれど、ライトなのが出て来るだろう分、案外サッサと利用できるようになったりしないかしら。ならないかなぁ、う~ん。


まだちゃんと読んでいないのだけれど、研究のとりあえずの詳細は、ワシントン大学の「No peeking: Humans play computer game using only direct brain stimulation」(UW Today)hatebuで読める。昨年12月の記事だから、ひょっとするともう日本語情報が出ているのかもなぁ。ノロマでスマンm(_ _)m


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  • 注1 元エントリで紹介したのはReutersによる動画だった。現在同じ動画は埋め込みからの直接再生が出来なくなってしまった。


最終更新日時 : 2017-01-22 23:15:13  

これ、おもしろかった。プラシーボ効果[ググる!]そのものについては、常連諸賢には説明を要さないだろうけれど、いやぁ自転車競技の記録改善は序の口、パーキンソン病治療が出来ちゃうとかしない手術で手術の効果があがるとかという話に至っては、まぁ魂消たまげますね。

プラシーボ効果への過剰な期待は抱くべきではないという話は様々あって、迂闊に過信してはいけないことは確かなのだろう。けれど、鰯の頭も信心次第、信じる者は救われるというあたりも古人の知恵であったことは間違いなさそうで、信念の強いヒトというか目の座ったヒトというかにはかないっこないという日常経験からしても、過信の基準は思いの外緩いものと見ていいのかもしれない、と時々は思う。

こういうプラシーボ効果的信念というものは、しかし、世の中をややこしくもしているんぢゃないかと思うことがある。プラシーボの薬効は本来空疎なものであると同様、空疎な幻想というか御神体というかトーテムみたいなもの、要するにいわしの頭を信じることからもヒトは力を得ているに違いないからだ。たぶん、プラシーボ効果は、特殊なヒトの心理と身体の結びつきを示すというよりも、ごくありふれたその結びつきを露わにしているに過ぎないんぢゃないか。

たとえば、体育会系部活動にまま見られた暴力的指導の類。実際に「実力校」と称されるような学校でもスポーツ科学的に見ればナンセンスな「指導」が行われていたなんてな話だって、実はその「指導」そのもののあるはずのない効力よりも、うっかりそれを信じてしまった生徒たちの心からこそ「実力」は引き出されたのかもしれない。プラシーボの偽薬で記録改善が起こるくらいなんだから、「伝統と実績」を誇る部活の「指導」となれば、大抵の10代はコロッと信じて「実力」を伸ばすくらいのことは仕出かしかねない。

どうせなら、もちっと実のあるものを、せめて実害のないものを信じて実力伸長を図ったほうがいいに決っている。インチキ薬なりインチキ指導なりで隠れていた能力が現れ出るようになるよりは、自分に備わった力を信じることが出来ればそれに越したことはない。

ところが、本邦の子どもたちの自己肯定感は、国際比較で見る限りずいぶん低いのだという*1。原因については諸説あるみたいだけれど、中には規則正しい生活の欠如を上げるものなんかもあったりして*2、自己肯定感が高いとされる国々の子どもたちの生活って日本以上に規則正しかったっけか、と訝ったりする。本邦で謂うところの「規則正しい生活」から生まれる自己肯定感といったもの、実は集団的標準に準拠した生活に他ならず、実のところ自己への配慮を喪失したところにあるんぢゃないか。こちらがそういうのと無縁の生活を送っているからなのかもしれないが、集団に共有されている「規則正しい」生活に合致できている自分は正しく認められるべきで、そこからハズレているヤツはカス、というような他律的で排他的なものなのではないかと見える。で、そうそうついては行けない基準を掲げれば、そこからついはみださざるを得ない者はますます自己肯定感を失うことになる。むやみに信じて必死になってついていったものだけが、偽薬的「規則正しい生活」を信じることで自己肯定感っぽいものを得る、というような具合ぢゃないのか。アンケートを採れば「オイラはスゴい」と答えが返っては来るだろうが、十全な自己肯定感とは縁が遠いものぢゃないんですかね、そういう手合は。

似たような話は、政治的信条や宗教的カルト的な確信、民族・人種差別にまつわるアレコレなどにも当てはまるに決っているが、書くのは面倒臭いし、書けば面倒臭いヒトビトを呼び寄せることになり兼ねないので、コレを省く。


非偽薬的朗らかな自己肯定というようなものが今日只今の文明において可能なのかどうか、なんちゅう面倒臭いことをついうっかり考え込んでメソメソしてしまうようなら、まだ鰯の頭を拝んでおいたほうが賢明だということなのかもなぁ、なんて考え始めるアテクシは、何事につけても信心不足で、ロクなもんぢゃぁございませんね。う~ん。


そういえば、本書中にもプラシーボ効果についての言及があったのだった。科学的に率直であろうとするあまり、プラシーボ効果を蔑ろにしているんぢゃないかというような現状批判、読んだ当初はニセ科学流行りの当今、危うい考え方ぢゃぁないかと思ったのだけれど……。また読み返してみっか。

あ、Kindle版も出ている。逆説的なタイトル通り、全体としてはおもしろかったぞ。




最終更新日時 : 2017-01-21 03:32:58  

もにょもにょ動く平均気温変化を眺めていても何となくしか感じ取られない気候変動だけれど、

と並べてみると、一目瞭然、途中経過も同じようにキャプチャーしてみても変動具合にさしたる変わりはない。年頭5日には「地球温暖化の「休止」はなかった、米英大チームが確認」(AFPBB News)hatebuというような報道もあって、この糞寒い日々、想像シ難いことではあるけれど、変動はたゆまず進行中。

「世界の気温、3年連続最高 米機関が観測」(共同通信 47NEWS)hatebuによると、

人為的な温暖化に懐疑的な姿勢を示すトランプ次期政権は、この研究に関連した気候データ取得の取りやめを検討中と米メディアは伝えている。NOAAのディーク・アーント主任は「米国民の利益のために、気候の状況を正確に伝えていきたい」と話した。

とのこと。原因が人為であろうが自然現象であろうが、気候データの取得を取りやめる必然などまったくないのであって、やはりしかじかの事実が都合悪いヒトビトの存在をそこはかとなく感じたりするのだが、そんな下衆の勘繰りはさておき、地球規模の気候観測が出来る主体はさほど多いとは思えない現状では、明日のトランプ大統領就任が地球全体にとっての不幸なのだと云わざるを得ない。

これだけの規模の観測を持続的に行い得るのは、現在のところまずアメリカを措いてはないと見るのが妥当だろう*1。その規模のぶん、利権がどうのこうのといったささやかな批判はあり得るものではあるけれど、しかし、大筋において観測が不要になるような楽観はあり得ないだろう。少なくとも僕のような素人にはそう見える。

こういうのを眺めると、今でさえ経済的に喘いでいる南側諸国が被る影響はほとんど破滅的と形容できそうなものだ。現在のシリア難民問題とは比するべくもない人道上の深刻な問題が引き起こされることは、ほとんど間違いのないことのように思える。世界経済の混乱は、日本の経済にだって、温暖化の直接的な影響以上のインパクトをもたらすことになるだろう。

直近に控えた東京オリンピック・パラリンピックだって、「本日の埋草/熱終焉を迎えるオリンピック」hatebuで紹介したカリフォルニア大学バークレー校の研究のように、《Tokyo, the city that has secured the 2020 summer Olympiad, would also be too hot to ensure athlete safety》というような予測もある。3年少々後のこととなれば、今さら対策の立てようもないということなのかどうか、国内報道をほとんど目にしないけれど、研究主体を考えるとまったく信用出来ない類のものではないだろう。どうすんだよ、金を浪費した挙句、アスリートの安全も保証できない大会なんぞ開いて。ったく。


そんなこんなを書いてみたところで、ボヤキ以上のものにならないのは切ないところだけれど、しかしなぁ、もちっと騒がないとマスマス以てどうにもならないというのは、これまたはっきりしている。国連の元親分も現役時代には、パンピーのお前らが自分たちのリーダーに文句つけなきゃダメぢゃんと云っていたわけで*2、まぁ爺ぃのボヤキも騒ぎの一つくらいには数えてやっていただけないものかと思うわけですよ。ダメですかねぇ。


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最終更新日時 : 2017-01-12 22:43:26  

それぞれ、再生画面右下「CC」をクリックすると英語字幕が表示される。NatureVideoとWiredのは自動生成英語字幕、Stanfordのは採録英語字幕になっている。詳しさとわかりやすさ、いずれもStanfordのがいいかなぁ。詳細情報は、「Inspired by a whirligig toy, Stanford bioengineers develop a 20-cent, hand-powered blood centrifuge」(Stanford News)「Hand-powered ultralow-cost paper centrifuge」(Nature Biomedical Engineering)あたりか。面白いネタだから、たぶん日本語情報もどこかに出てるんだろうな。あとでググってみっか(cf. 20セント 遠心分離機[ググる!])。


用途はマラリア[ググる!]アフリカ睡眠病[ググる!]の原虫発見などに、少なくとも現在は限られているから、本格派遠心分離機があらゆる分野で不要になったとかいうような弩派手な話ではないけれど、とにかくアイディアのシンプルなところがスゴい。出来上がったモノの映像を眺めていると、なぜこれが今まで存在しなかったのか、そちらのほうが不思議な気がして来なくもない。しかし、実際に遊んだ経験のあるヒトも多そうなびゅんびゅん独楽を改めて見直してみようという発想、そもそもなかなかないものぢゃないか。

独楽の回転数や加速度を測定しようというところに至るのはさらに少なく、「美しい数学」でもって捉えたヒトはごくわずか、そのわずかなヒトの中でこのヒトだけがバイオエンジニアだったことで生まれたのが、この20セントの手動遠心分離機ということなんだろう。

実際のところ、たとえば、「びゅんびゅんゴマを作ろう(ブンブンゴマ)│科学実験データ│科学実験データベース」(公益財団法人日本科学協会)を見ればわかるように、「科学協会」と称する団体が子ども向けとは云え取り上げるに値する教材と見ているわけだし、《比較的簡単な工作ですが、意外な高速回転が得られる楽しい独楽(コマ)》として紹介されてさえいる。科学的な興味対象として意味あるものと見ているのだから、後は《意外な高速回転》の定量化と血液検査のプロセスについての知識さえあれば……というふうに思えなくはない。でも、その2点に到達することが人類の歴史にとっては途轍もなく難しいことだったのだな。びゅんびゅん独楽は、僕が子ども時代にもあったものだし、たぶんそれ以前から、それも相当の昔からあったものなんぢゃないだろうか。ひょっとすると少なくとも1世紀やそこいら*1、人類はびゅんびゅん独楽を興味深い玩具としてしか見られなかったわけだ、このバイオエンジニアさんに出会うまでは。

そう思って眺め直すとなんかしらそれまでとは違った、様々な偶然と必然の、貴重な交差みたいなものが感じ取られる気がして来て、心揺さぶられる思いがする(と云ってみたいところだけれど、それはちょいと大げさかしら)。う~ん。


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たしか複数の独楽を同時に回す話も出て来ていたはず。手動遠心分離機の効率をあげるアイディアとして採用できないかしら?^^;

そういえば、82年刊行のこの絵本ももうずいぶん以前に出たものってことになるのか。う~ん、こちらも爺ぃになるわけだわ\(^o^)/


  • 注1 ワイアードのヴィデオによれば、何千年もの間なのだそうな。

  

夏は温暖化なんとかしろぉ!、冬は温暖化なんかは捏造だぁ!と云いたくなる向きに、たしかに今はやたら寒いけれど、やっぱり温暖化は進んでいるみたいよ、というお話(2014年)と、それに加えてここ最近の寒さに関するお話(2017年)。それにしてもたった3年でヒトって老けるもんですね。う~ん。


「polar vortex」は「極渦[ググる!]」。環境問題に関心があるヒトなら、オゾン層破壊に深く関わるとされていたことを記憶していらっしゃるのではないか。ここではたぶん*1、主として北極側の極渦、その歪んだ形状ゆえに寒気をより低緯度にもたらすものとして扱われている。しかしなぁ、メリケン界隈では(誤って)新現象扱いされていたとは知らなんだ。とそんなこんなで、極渦によるアレコレが昔からのものであって、悪くなった(Getting Worse)わけではないというわけですね。

とはいえ、「Snow blankets monuments in Greek capital」(Reuters、YouTube)の、

というような光景を目にすると、せっかく温暖化しているんだから、せめて10℃以下の気温はどうにかヤメにしてくれ、くらいのことは、ついつい考えちまいまさぁねぇ。うー。

こいつも極渦の流れがずいぶん南にはみ出してきているせいだとかなんとかなんだそうだけれど。


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  • 注1 何分英語がぱぁ~なもんで。

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